言 — GLOSSARY

江戸ことば辞典この時代に使われた言葉と、この時代に生まれて今も残る言葉

記事を読むための基本用語と、江戸生まれの現代語を集めた。語源には諸説あるものが多いため、由来の確度(★〜★★★)を明記する。

壱 | 暮らしと商いのことば

損料そんりょう
借りた品物の傷み分として払う使用料。これを取って布団や鍋を貸す商売が損料屋。→ 損料屋
引札ひきふだ
商店が配った刷り物の広告。チラシの元祖。1683年の越後屋のものが有名。→ 引札
棒手振りぼてふり
天秤棒で商品を担いで売り歩く行商人。振売とも。→ 棒手振り
下り物くだりもの
上方から江戸へ「下って」くる高級品。酒・醤油・木綿など。→ 百万都市の胃袋
札差ふださし
浅草蔵前で、武士の俸禄米の受け取り・換金を代行した商人。金貸しも兼ねて富を築いた。
御定相場おさだめそうば
幕府が定めた金・銀・銭の公定交換レート。1700年に金1両=銀60匁=銭4貫文。→ 三貨制度
両替商りょうがえしょう
三貨の交換・預金・貸付・為替を担った金融業者。銀行の原型。→ 三貨制度
店子と大家たなこ・おおや
長屋の借家人が店子、管理人が大家。大家は行政の末端として店子の身元を保証した。

弐 | 制度と人のことば

宗門人別改帳しゅうもんにんべつあらためちょう
村・町ごとに毎年作られた事実上の戸籍。所属の寺が身元を保証した。→ 人別帳と無宿
無宿むしゅく
人別帳から名前が外れた人。身元保証がなく、定職・住居を得にくかった。→ 人別帳と無宿
往来手形おうらいてがた
旅に携帯した身元証明書。寺や名主が発行するパスポート。→ お伊勢参り
五人組ごにんぐみ
近隣数戸で作る連帯責任の単位。相互監視と相互扶助を兼ねた。
村請制むらうけせい
年貢や法令を個人でなく村単位で請け負う仕組み。村の自治の土台。→ 百姓たちの江戸時代
石高こくだか
土地の生産力を米の量(石)で表す制度。1石≒大人1人の年間消費量。
参勤交代さんきんこうたい
大名が江戸と国元を一年おきに往復する制度(1635年制度化)。江戸の武家人口の源。→ 江戸の成り立ち
口入屋くちいれや
奉公先を斡旋した職業紹介業。人宿とも。地方から出てきた人の入口だった。
火付盗賊改ひつけとうぞくあらため
放火・盗賊を取り締まった武力警察。長谷川平蔵が著名。→ 人物名鑑
岡っ引おかっぴき
同心が私的に使った捜査の手先。正式な役人ではなく、元犯罪者も多いグレーな存在だった。
年季奉公ねんきぼうこう
年限を定めた住み込み奉公。前借金と結びつくと、事実上の人身拘束にもなった。→ 吉原

参 | 遊び・メディア・旅のことば

吉原細見よしわらさいけん
吉原のガイドブック。店・遊女の名と格・料金を一覧にした定期刊行物。→ 吉原
花魁おいらん
吉原の上級遊女。錦絵に描かれるスターであると同時に、年季奉公の身でもあった。→ 吉原
評判記・見立番付ひょうばんき・みたてばんづけ
店や役者、遊女を論評・ランク付けした出版物。口コミのメディア化。
瓦版かわらばん
事件や災害を速報した一枚刷りの街頭ニュース。読みながら売ったので「読売」とも。
木戸銭きどせん
芝居や見世物の入場料。木戸(入口)で払うことから。
こう
積立や相互扶助のための集まり。伊勢講は旅費を積み立てて代表が参宮した。→ お伊勢参り
御師おんし
伊勢などの神職で、宿・祈祷・観光を一括手配した旅行代理店的存在。→ お伊勢参り
抜け参りぬけまいり
主人や親に無断の伊勢参りを咎めない慣行。柄杓一本で施しを受けながら歩けた。→ お伊勢参り

肆 | 江戸で生まれて、いまも使う言葉

語源の確度: ★★★=定説 / ★★=有力とされる説 / ★=俗説・諸説あり(断定しない)。

十八番おはこ★★★
得意の芸。市川家が選んだ「歌舞伎十八番」から。台本を箱に納めたことが「おはこ」の由来とされる。
二枚目・三枚目★★★
美男役と道化役。歌舞伎の看板で二枚目に色男、三枚目に道化の名が書かれた並び順から。
花道はなみち★★★
「引退の花道」の花道。歌舞伎で役者が客席を通って登場する通路から。
大詰めおおづめ★★★
物事の最終局面。歌舞伎の最終幕を指す言葉から。
黒幕くろまく★★
陰で操る人。舞台転換などに使う黒い幕から来たとされる。
どんでん返し★★
結末の大逆転。舞台装置を90度回転させる大道具「強盗返(がんどうがえし)」から来たとされる。
差し金さしがね★★
裏で人を操ること。芝居で蝶や鳥を操った黒塗りの棒から来たとされる。
正念場しょうねんば★★
ここ一番の場面。歌舞伎・浄瑠璃で主役が真価を見せる「性根場」から来たとされる。
幕の内弁当
芝居の幕間(まくあい)に食べた弁当から、とする説が有名。諸説あり。
くだらない
上方から「下って」こない品=質が劣る、から来たとする説が有名だが、語源学では異説もある俗説。
べらぼう
程度がはなはだしいこと・ばか者を指す江戸の流行語。見世物の「便乱坊」由来説など諸説ある。
初物はつもの★★
「初物を食べると七十五日長生きする」の俗信とともに、江戸の消費熱を象徴した言葉。→ 百万都市の胃袋

語源の記述は編集・出典ポリシーに基づき、辞典類・劇場関係の解説で確認できるものに確度を付して掲載している。項目は記事の追加とともに増やしていく。最終確認日: 2026年8月25日

版 20260827 0207